はじめに

2020年末頃の話。全世界が未知のウイルスに生活を脅かされる中、兵庫県の神戸市に10年の小さなライブバーを営んでいた私は改めて“音楽”や“人生”について向き合うことになりました。人生で二度も経験はできないであろう未曽有の事態に考え付いた結論は「音楽は不要不急であり、生命に代わるものでもなければ、当然にして懸けるものでもない」ということです。
生きるために必要不可欠ではないからこそ、音楽は自由だと思うのです。
"コロナ禍”と呼ばれる時代とライブハウスの相性は最悪そのもので、誰1人正解がわからないままどうしようもなく路頭に迷ったように感じます。
ですが、それって今に始まったことでしょうか？「音楽で飯は食えない」と言われたのはここ数年の話ではないですし、どうしようもないと頭を悩ませる困難が待ち受けているのは常日頃からです。生きていて悩まずに歩んでこれたことなんて一度もなかったはずです。
「時代が夢をみることを忘れさせている」そう考えた私は“誰もやりたいことを諦めなくていい環境の構築を目指して、最悪のタイミングで新店舗の立ち上げを決意するのです。
誰しもが苦しい時代の中で「無観客配信」というライブの醍醐味を全て奪ったような営業に付き合ってくれるだけでなく「機材費」として目に見える形で、あの小さい店を救ってくれた全アーティストが報われるような空間を新たに生み出す。そして、“夢を叶えるのではなく、叶えて現実にして実現することで誰かに新しく"夢を魅せる"ことができる場所にする。そういう想いが込められています。是非ご来店いただいた際に何かを感じていただけると幸いです。

店主